みんなは知らない 4 GIGAスクールの裏で何があったか

パソコン納品時ぎゅうぎゅうづめ問題

パソコンが配られた。
しかし納品されたのは、収納箱の中に44台がぎっしり。
30人学級であろうと35人学級であろうと、収納箱のフル収納44台が納入され、電源も接続された。

これをどう使うかは各学校に任された。

パソコンはだれのものか問題 個人の物とするか、学校の物とするか。

まずは所有権の問題。だれのPCか。
世間では一人1台、個人のものという選択をした学校の報道が多かった。
しかし、問題を感じたためそうしなかった。

1 納品が3回に分かれているため、一人一台が行き届かない。
2 物の所有の問題は、スマホを与える際の分かれ道になっている。
  一度個人のものとしてしまえば、教師が触れることや点検することもできない
  事例が出てくることが予想される。
3 卒業して返却するとき、机と同じく、汚れたPCときれいなPCと差が出る。

カスタマイズしたりシールを貼ったりすることで自分のPCに愛着を持ち、大切にしてもらう、というストーリーや、
取り合えず配布して、問題が出てきた時点で学級会を開いて自分たちでルールを決めていけばいい、というストーリーも、先行事例や実践、報道で示されていたが、

これまでの経験から、ルール無しに「あなたのもの」とするのは危険。

成功した事例をほぼ聞かない。

約束なしにスマホを与えてから、スマホ中毒になる事例は情報モラル指導で散々見てきた。

後付けでルールを作る大変さは、学級ルールを作るときに散々味わってきている。基本、後付でルールを作っても守られることは難しく後の祭りとなることが多い。また、学級会を開く時間は早々とれない。

案の定、若い先生の、一つの学級の実践であったりする。
そして、次年度にそのルールがどうなるかも、情報が無い。
有耶無耶になっていくことが目に見えている。

PCは、「学校のもの」と規定する。

実際問題、PCはリース品であり、学校に返却しなければならない。
そして学習のために納品されているものである。

その大前提を隠さず子供にも大人にも情報提供し、共有することが必要と考えた。
PC室のPCと同様であり、一人一台使えようになるが、それは学校のPCを借りているものであり、あなたのものではない、という共通理解を学校ルールとして定め、明確にし、全校放送で強調して伝えた。

みんなのもの、であるから、大事にしよう、と呼びかける。

クラウド バイ デフォルト」の時代であり、実際PCは入り口に過ぎない。
個人のPCとすると、「オレのPCを誰かが触った」「オレのPC何だからどう使おうと勝手だろう」というような、学習に関係ない問題も出てくる。
みんなのPCであれば「いつもの番号のPCが使えなくても、違うPCを使えばいいよね。」「どのPCでも使っていいよ」「みんなのものだから、大切に使ってね」という呼びかけが通用する。

約束作りについては、スマホを与える前の約束のHPが参考になった。
『スマホ18の約束』をご存知ですか? | こどもを「メディア」から守ろう!

子供は子供であり、忘れ物もすれば落としもする

子供は大人ではない。本読みカードを毎日忘れたりプリントが家庭に渡らなかったりする。そんな家庭に40,000円するパソコンを渡して戻ってくる保証があるだろうか。
出版された本やインターネットに掲載されている情報は、情報に長けた教員、子供の事例が多い。忘れ物をしない子供の事例ばかり。
宿題はやらない、持ってくるものは持ってこない、親の養育の手伝いも期待できない、そんな学校の事例でなく、言われたことは確実にできる生徒ばかりのような事例が挙げられていたが、実際神戸ではコロナ禍で貸し出した学校のPCが戻ってこないことがニュースになっていた。安易に一人一台貸し出す、与えることは危険と判断した。

ひと箱に44台詰め込みのPCをどうするか問題

納入されたままでは、1つの収納箱から一クラスが拝借しても、余りが出てしまう。これでは恩恵を多くの子供があやかれない。


PCはすべて連番になって番号が振ってある。
一クラスは30人から35人程度である。
44台ぎっしり詰まっているところから末尾を抜いてしまうか、
すべてずらしていくか。


ひと箱に35台にし、余剰分で他のクラス分を作った

ずらしていくのは現実的でない労力を要する。
年度が替わるときにまたずらしなおすこともまた現実的でない。
第1回納品の35台は固定。
第2回納品の44台ずつぎっしり詰められた収納箱から、通し番号にズレが出るのを承知で、35番以降のPCをそれぞれの箱から回収し、それらを集めて中学年分、低学年分のPCを配置しなおした。
第3回納品時、PCを回収しなおし、なるべく連番が続くようにして配置をしなおした。

PCをどの向きで収納箱に納品してもらうか問題

一度納品すると、すべてのPCの入れ方が決定されてしまう。
どういう向きで入れたら、定期チェックの際に番号が見やすいか、
担任が確認しやすいかを考えた。

通常は、折れるちょうつがいの部分を下に入れるのが正当な納め方。
しかし、PCについている通し番号は左上部分。ちょうつがい側についているので、ちょうつがい側を下にする入れ方では、PCについている通し番号が奥に入り込んでしまい、番号を確かめたいときにいちいち全部引き出さないといけなくなる。


向きを入れ替えてはどうか。すると電源供給口が下側になってしまい、上からたれている電源コードが届かなくなってしまう。

ちょうつがい側が上、番号がすぐ見られる位置にした

向きを考えた結果、通し番号が手前上になり、電源供給口も上の電源コードに近い側になる置き方、ちょうつがい側が上に来る形に納入してもらうこととした。
画面部分が下になるため、実際は推奨されない置きかたとなるが、番号が見やすく電源コードもたやすく差し込めるメリットの方が大きいと判断した。


納品について、納品の業者さんに、決めた向きを伝え、納品をしてもらった。
44台すべて詰め込んでの納品は、変更ができないとのことだった。

通し番号だけでは整理しにくい問題 学級用番号をつける

通し番号は桁が大きいため、通し番号を元に返却しようとすると大変時間が掛かる。そのため、児童用・学級用として番号をつけることとした。

どこに番号をとりつけるか問題。クロムブックの表面加工はシールを受け付けない。

クロムブックの表面加工は、でこぼこがあり、シールを張るとすぐに取れてしまう。
どこに番号を振れば見やすく、児童が戻しやすいかを考えた。
情報部の中でもいくつか例が示されていた。
一つは、ちょうつがい部分。加工が無く平らであるため丸シールが張りやすい。
一つは、側面部分。狭いが、平らなため丸シールが取れにくい。

ちょうつがい部の平らな部分と側面に、収納庫記号と1~35の番号を貼った

納入はちょうつがい部分を上にするようにしたため、シールを上部分と側面部分につけるようにした。上部分につけるのは、収納箱を開けたときにうえから見やすいため。横部分につけるのは、児童が返却する際に横から並びが見やすいため。

学級は最大が4組まであるので、シールは、蛍光の丸シール赤・緑・黄色・青のクラスカラーを購入し、隣り合うクラスは違う色にすることで、混入しても一目で分かるようにした。

シールは①②のような番号シールと、収納箱のABCを示すシールの2つを貼った。

つまり、PC123456番は、A1 収納箱Aの1番である、というように。

また、収納箱側にも同様に1から順にシールをはり、返却場所が一目で分かりやすいようにした。シールを張る前と比べ、返却の速度がはるかに速くなった。


シールを貼るのは
ICT支援員さんにお願いをした。

納品前に考えなければならなかったこと

・番号のふり方の問題
・どの向きで配置するかの問題
・貸し出しの約束の問題
・パソコンの所有権の問題
・リース品であることの問題
・段階的に配られていった問題
・情報モラルについての考え方の問題



現実はどうか。
家に持って帰って言っても開かなければ何の連絡も取れない。
Classroomに何を売っても、導入アプリに何のメッセージを入れても、ミートやズームでつなごうとしても。本人がその場でやろうと言う意思が見られなければ全く無力である。

Wi-Fi問題
株価での価値観に食い込む問題。
職員が入れ替わってしまう問題。そのため哲学が継承されない。